2回ほど「番外編」が続きましたが、今回は軌道修正。幕末の東大和市域の話に
戻りまして御座候。
江川英龍さんが生存中は、英龍さんがいくら「やりましょうよ、絶対イケるッスよ!」
と建言しても、幕府がなかなか首をタテにふらなかった「農兵」ですが、遅ればせ
ながら採用してみるや否や、一揆鎮圧に貢献したりでその有効性は実証されて
ゆきます。
こーなると、幕府はさらに農兵を使おうとするワケですが、今度は農民が「NO」を
突き付けます。
幕府権威の弱体化が、支配構造の底辺にまでジワジワと迫ってきつつありました。
さらに慶応3年(1867)12月9日、
「王政復古の大号令」
が発令されます。
日本政府の形を奈良時代以前のスタイルに戻して、天皇親政で政府をつくるって
いうんですよ。
もちろん、そんなこと現実には無理ってことは当たり前田のマエケン体操。
薩長・公家側の、武力を背景にしたポーズなんですが、ただこの発令によって、ホン
トに幕府はなくなっちゃったワケです。
なくなったとはいっても、新政府の支配力がすぐに江戸まで影響するワケではない
んで、東大和市域のような天領は幕府があったときと同じように代官が支配して
いました。
ただ、治安の悪化は今まで以上にひどくなり、村々ではそのことに頭を悩ませること
になります。
そうした中で、慶応3年12月17日、蔵敷村組合を代表して名主の杢左衛門さんが
江川代官所に書状を差し出しました。
「近頃ご府内ならびに地方では悪者どもが押し歩いており、容易ならざる状況です。
兼てよりお取立ていただいていた農兵を使って差し押さえ、もし手に余るようであれ
ば打ち殺しても構わないとの仰せを承知いたしております。
また、組合村々の農兵たちへ前もって申し渡してあるように、御出役様からご命令
があったときは、何時なりとも出動しお指図を受けますよう仰せ渡され、恐れ入り
奉っております。
しかる上は、帰村次第組合の農兵たちに申渡し置き、一先ず差支えのないように
いたします。このことの請書を差し上げ申します。」悪者どもがやってきて暴れるようなら、いつでも農兵を出動させる用意ができてい
ます、という請書です。
農兵制度へのモチベーションは、同じ江川代官領でも地域によってまちまちだったと
思うのですが、蔵敷村組合ではそれほど高くなかったのではないかというのが「里正
日誌」を読んでいるワタクシの印象です。
しかし、それなりの時間とお金を費やして育てた組織ですし、いざという時には自分
たちの村を守るために汗をかこう、という決意表明ですね。
ところが、この3日後。代官所から次のようなお達しが蔵敷村に届きます。
「ご府内が物騒なので、そちらの組合の農兵5人をしばらくの間、新銭座屋敷内へ
早速来て詰めるように取り計らいなさい。鉄砲などは持参に及ばず、稽古着のまま
で来るようにしなさい。この書付は追って返却するように。以上。
卯(慶応3年)12月20日 江川太郎左衛門役所 」おい、おい、おい・・・。
確かに農兵一団となって治安維持に努めます!とは言いましたよ。
でも、そのことと江戸の屋敷を警備しろってのは、話の次元が違うんじゃないの?
新銭座(

クリック!)ってのは、芝にあった江川家の屋敷並びに小銃や大砲の
練習場です。
代官所では、村民たちの言い分を自分らの都合のいいように解釈してしまった
んですかね。
さぁ、この要請に組合では名主たちが集まって協議を重ねます。
「そりゃあんまりだゼ、セニョール!!」
野口村(東村山市)名主の勘左衛門さんと、後ヶ谷村名主の彦四郎さんは勢い
余って、こんな書状を代官所に出してしまいました。
「この頃のご府内が物騒なので、当組合の農兵を5人、お役所へ詰めるようにとの
お達し承知いたしました。しかしこの頃は、近郊においても浪士たちが立ち廻り、
殊の外物騒です。農兵の江戸詰めを仰せつけられては、村方がカラになって取締り
に影響を与えるので恐れながら当惑しております。
また、農兵たちについてもどのような御用向きの筋を仰せつけられるのか、と深く
心配しており、江戸詰めの件は難しいとのことをしきりに嘆いております。
何分、それぞれが承服せず、村役人たちにおいても重々恐れ入ることでございます
が、何とぞお慈悲をもって右のことをお考えくださり、当組合の農兵を江戸詰めに
することは免除していただきたくお願いいたします。」この書状を受け取った代官所、どんなリアクションを見せたかというと・・・
大激怒!!「里正日誌」は
「御役所殊之外御立腹」と書いてます。
メンツをツブされた、という気持ちがあったのでしょうかねぇ。
「御役所」と書かれているところから、代官本人ではなく、手代・手付の怒りに触れた
ものでしょうか。
「そうそう百姓どもの意見が通ると思うなよッ!」
勘左衛門さんと彦四郎さんの両人は、すぐさま
「宿預け」にされてしまい
ました。拘留と同じです。
さぁ、どうなる、二人の名主!
どうなる、蔵敷村の農兵たち!?

再来年の大河ドラマが発表になりましたね。「花燃ゆ」ですか。
「吉田松陰の妹」のドラマで、演じるのは井上真央さんだそうです。
またまたずいぶんな変化球できたなぁ、というのが正直な感想です。
井上真央さんじゃなくてね、彼女が演じる方のヒト。
松陰の妹なんて、今まで注目されたことなんてあるんでしょうか?
ハッキリ言いまして、ワタクシ全く知らない人物です。
まぁ、新島八重だって、大河で取り上げる以前は地元の会津でさえ
あまり知られていなかったそうですけどね。
でも、それ以上のマイナー選手でしょ。松陰の妹ってのは。
原作はなくて、オリジナル作品だそうですけど。
主人公が無名ですから、先入観なく見られるってのはいいかもしれま
せん。作る方もそうでしょうけど、それだけに外角へ大きくハズれて
いく「ファンタジー歴史風ドラマ」にならないか、それだけが心配ですね。
「江」みたいに・・・
時代背景が幕末ってのは、個人的には嬉しいんですけどね。でも主役
側が長州ですからね。
新選組はまた悪役ですね。極悪非道の人斬り集団ですね。
えぇ、いいんです。もう。
「久坂さんや稔麿さんを殺した人殺しよ!」って真央ちゃんに言われる
んですね・・・。
スポンサーサイト
イッセーさま、こんばんは。
今日も興味深い記事をありがとうございます。
誤解をとこうと訂正記事を届けに行って捕まっちゃった勘左衛門さんと彦四郎さんの行く末が気になります。どうか御無事でお帰りになりますように、アーメン。(>_<)
再来年は吉田松陰の妹のお話ですか・・・
よくある有名戦国武将の大河イメージとかけ離れて、最近独創性の強い路線が出来たような・・・敗者側の歴史や、歴史の裏に埋もれた人物を発掘する、というテーマは面白いし新鮮ですが、当たり外れがありそうですね。
八重さんは、視聴率こそ低かったけれど、史実を出来うる限り掘りおこして、信憑性が高いエピソードが織り込まれていて説得性がありました。明治になってからの八重さんは、記録が沢山残っていたので、史実に忠実に描かれていました。綾瀬さんはじめキャストの名演技光ってますね。名作だと思っています。
今度は井上真央さんですか(*_*)私には当の人物も中のヒトも大変化球です。真央さんは、整形してなそうなところがいいですね。ナチュラル派?というか。
>新選組はまた悪役ですね。極悪非道の人斬り集団ですね。
えぇ、いいんです。もう。
あはは。会津もメチャいじめられそう。容保など、悪の枢軸のように描かれそうですね。
近藤さんや斉藤さんの配役も気になります。斉藤さん、出てくれれば、の話ですが。(笑)
せいぜい、土方さんと総司くらいまででしょうね・・・(しょぼ)
お楽しみ4コマまんが。
もう、お茶目なイッセーさま。島田さん、お釈迦様ですか?
手の上で弄ばれてるの、孫悟空じゃないですか、もう!(爆)
でも、ひさびさに、斉藤さんのご尊顔が拝めて嬉しかったデスぅ(#^.^#)
大号令の発布日から丁度、146年経った訳ですね。Junpei
幕末を扱った大河ドラマでは、昔「獅子の時代」というのがありましたが、
傑作でした。主人公が会津藩士(菅原文太)と薩摩藩士(加藤剛)でしたが、
実在の人物ではなくオリジナルでした。でも、会津戦争や斗南の生活などが
詳しく描かれていて傑作でした。
実在の人物だけでなく、そういう作り方もあるんですよね。
「真央さんは整形してなさそう」・・・美雨さん、けっこう言いますね(笑)。
往年の東尾バリのビーンボールじゃないですか。まるで他の女優さんは工事
済み・・・みたいな。
仮に明治維新の年が、江戸幕府開府の年だったとすると、146年経った今年は
ちょうど8代将軍吉宗から9代将軍の家重に替わったばかりの頃です。
みなさんお馴染みの「仮名手本忠臣蔵」が初めて上演されたばかりで、鬼平も
遠山の金さんも座頭市も、まだ生まれるはるか前という時代です。
維新から現在まで日本は、外国と4回も大きな戦争をして、目まぐるしい変化と
発展を繰り返してきましたが、江戸時代ではまだあとさらに120年も幕府が
太平の時代を率いていたんですね。
一口に「江戸時代は270年間続いた」って言いますが、これはものスゴイこと
だと思います。
維新以降の146年間の日本を、幕末維新の人たちはどう想像したのでしょうか?
イッセーさんこんにちは。初めてコメントします。2期のバクさんから勧められてブログ読んでます。江戸検1級の受験者です。2年連続で落ちてます。でも、気持ちは上昇中。私も江川太郎左衛門英龍が大河ドラマの主人公に賛成です。これからもブログ楽しみに拝見します。漫画も楽しみです。
はじめまして。ありがとうございます。
再来年が幕末モノということは、大河で英龍さんが取り上げられるのは
あと3年は確実にナイ!ということになってしまいました・・・。
いい主人公だと思うのですけど。賛同していただけてうれしいです。
バクさんのような「江戸検受験のためになる」ブログでは決してありません
が、息抜きに楽しんで読んでいただければ何よりです。
1級合格をお祈りいたします!
佐藤彦五郎の日記には、この12月中~下旬の記録がありません。
壺伊勢屋事件のため、記述する余裕もなかったと推察されます。
甲府城乗っ取りを画策する薩摩系浪士一味が江戸を発つという情報があり、
増山手代が日野宿へ駆けつけ逮捕協力を要請、日野農兵7名が出動し
15日に八王子宿・壺伊勢屋に潜伏する一味を鎮圧しました。
その顛末は、イッセーさんもご存じでしょう。
17日には相州萩野山中陣屋の焼き討ち、23日には江戸城二の丸への放火、
そのほか強盗やらテロやらが頻発するという騒然とした状況の中で、
江川役所が殺気立っていたのもわかるような気がします。
そして次回記事のとおり、25日に庄内藩を主力とする幕府方が
薩摩藩三田屋敷を攻める事態となりました。
NHK大河ドラマ、1年おきに幕末もののパターンが定着してきたのでしょうか。
新選組は、「八重の桜」でさえ“暴発”よばわりされましたから
「花燃ゆ」ではさぞクソミソに叩かれるんだろうと想像すると、なんだか笑えてきます。
それはそうと、吉田松陰はどう扱われるのか。高須久とのロマンスは必須でしょうね。
門人らも持て余すほどの過激論を主張し、老中襲撃を企てるといった言動も
正面から余さず描いて欲しいです。
ついでに寅次郎つながりで、ヒロインの文に贈る歌はこれ↓
「俺がいたんじゃお嫁にゃいけぬ わかっちゃいるんだ妹よ~」
壺伊勢屋事件は「東の池田屋事件」といってもいいほど興味深いわりには、
知名度が低いので当ブログでも触れようと思ったのですが、東大和市域から
ハズれる話でもあるのでスルーしました。
ただ、武州一揆の築地河原の戦いと壺伊勢屋事件の二つは、日野の農兵や
防衛意識を考える上で、とても参考になる事件ですよね。
新選組は主役にならない限り、ヒールから脱却するのは無理のようですな。
多少イメージがアップしつつあるとはいえ、国民大半のイメージが「人斬り」
から抜け出ていないということなのでしょうか。
方や吉田松陰は、言動はテロリストと全く変わらないのに歴史上の偉人と
して通っています。明治政権を手中に収めた長州のプロパガンダが、140年
経った今でも生きているということですね。
コメントの投稿