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すみません 多摩湖は東大和のものです

ワタクシの住んでおります東大和市には「東大和観光ガイドの会」という、市公認の
団体がありまして、ワタクシもその末席に置かせていただいております。
先日の土曜日に市内にあります多摩湖(村山貯水池)で、東大和市の観光マップを
配布しながら、ご希望する方には多摩湖の歴史や周辺の名所等をご案内する観光
イベントを行ってまいりました。

さて、現在東大和市が声を大にしてアピールしているのが、コチラでございます。
観光1

多摩湖は正式名称を村山貯水池という人造湖ですが、位置する場所がちょうど東京都
の東大和市、東村山市、埼玉県の所沢市に隣接しているため、どの市域にあるのか
わからないという人が非常に多いんですね。3つの市にまたがっているんじゃないかと
考えている人もいますし、東村山市にあると思っている人が一番多いのではないで
しょうか?
それは100パーセント、志村けんさんが歌った「東村山音頭」の「ひがしむらやぁまぁ~、
庭先ゃたまぁこぉ~♪」が、その根拠でしょう。今から50年近くも前の歌ですよ。何という
影響力・・・志村けんの偉大さが偲ばれます。

志村けん

それはともかく。
ガイドをしていても「多摩湖があるのはナニ市?」「東大和と東村山の境界線は?」と
いうご質問をとても多くいただきますので、実は市民もあんまり知らないその辺りの
事情をご説明いたします。

多摩湖境界線

上の地図は「東大和観光マップ」の一部をワタクシが加筆したもので、多摩湖の東側
になります。
オレンジで南北に線が引かれていますが、これが湖の堤防(多摩湖下堰堤)です。
この場所からは日本で一番美しいと云われる大正時代設計のバロック建築様式の
取水塔や、西に富士山、また天気が良ければ東にスカイツリーも見ることができます。

黒い線は市の境界線を表しています。
湖の北部、周囲道路に沿って埼玉県(所沢市)と東京都の県境があります。なので、
多摩湖は完全に東京都側だということがわかります。
そして南北に引かれた線が東大和市(西側)と東村山市(東側)の市境です。堰堤の
北半分は東村山、南半分が東大和と分かれているのですが、湖部分はほぼ100%
東大和市にありますよね。
というワケで、多摩湖は東大和市にある、これが正解。

ただ、先に上げたポスターにも「多摩湖の99%は東大和市」とあるように100ではない。
地図をみればお分かりかと思いますが、北側の水際一部分が東村山市域なんですね。
志村けんさんが「庭先」と言ったのは、まんざらウソではないわけです。

さて。
皆さんの中には「べつに多摩湖が東大和だろうが、東村山だろうがどっちでもいいだろ、
同じようなもんだろ」と仰る方もいらっしゃると思います。確かに第三者の目から見れば
その通りなのでしょうが、東大和側にはこれは譲れぬ思いがあるのです。

明治時代以前、東大和市は6つの村々に分かれておりました。
下はその図です。(安島喜一氏の原画に一部加筆)
東大和地図・江戸時代

西から芋窪村、蔵敷村(正徳年間に奈良橋村から独立)、奈良橋村、高木村、後ヶ谷村、
清水村。みんな南北に細長いでしょ。
北側に水色で描いた部分がありますが、ここが現在の多摩湖です。南北を峰が走っている
窪地で真ん中に石川(北川)という川が流れていました。実は明治時代までは各村々の
中心地はこの地域の中にありました。この部分に土地を持たなかったのは高木村だけです。
各村々には、南峰を越えた先に前川、奈良橋川、空堀川という川が流れていましたが、その
先の南には水場はありません。
川といっても空堀川などと呼ばれるくらいですから、今もそうですが当時も水量は少なかった
のでしょう。できる米の品質は悪く「下々田」という最低評価の田んぼしかありませんでした。
むしろ、多摩湖地域は日当たりも良く石川の流れもあったので、耕作地の中心はこの部分
だったのです。

承応3年(1635)に玉川上水、次いでその分水の野火止用水が開削されました。
東大和のそれぞれの村は水を求めて南へ南へと開拓してゆきました。各村々が南北に細長
いのはそのためです。しかし、上水は江戸市民の飲み水であり農業用水ではないとして、
上水の水は使えませんでした。結局村々の開拓は徒労に終わったのです。

その後、大正時代になり東京の人口が増えると飲料水の需要が高まってきました。
とこで東京府は多摩川から水を引き、どこか広大な場所に人造湖を作って飲料水を確保
する計画を立てます。その場所に東大和市域の村々が選ばれたというワケなのです。
当時この地域に住んでいた村人たちはわずかな退去料をもらい、先祖代々住み慣れた
土地を離れてゆきました。
いずれ、その話も記事にまとめようかと思いますが、つまり多摩湖はこれら村人の生活が
あった場所なのです。「多摩湖は東大和のもの」なのです。

さて、ここで江戸時代の村についてちょっと一言。
多摩地域の村々は村によって天領(幕府直轄領)と私領(旗本領)とに分かれていました。
村一つがそのどちらかになるのだろうと思いがちですが、それだけではなく一つの村で
天領と私領が混在している場合も珍しくはなかったのです。

清水村もそういった天領と私領に分かれた村だったのですが、江戸時代の後半に幕府が
自衛防犯のためにいくつかの村々をまとめて寄場組合村というのを結成させました。
清水村は近隣の蔵敷村や奈良橋村などと同じ組合に所属しました。
ところが幕末期、代官の江川太郎左衛門が提唱した農兵政策。これはやはり自衛防犯
のために農民に銃武装と訓練を施すという政策ですが、このときも天領の村々に限定して
組合を結成させました。
ところが、天領地域があるはずの清水村はこの時どの農兵組合にも入らなかったのです。
いったい、どうして?

「新編武蔵風土記稿」には清水村について、こう書かれています。
「・・・私領と云へるは淺井楯之助采邑にして、古新田の分は御料にして、そこは大岡源
右衛門代官所なれども、此の分には民戸なく、則この本村の持添なり」


つまり、村内で人が住んでいるのは「本村」という地域だけで、天領は昔に新田開発を
した部分で人は住んでおらず、淺井支配の本村の住民が所有しているのだ、ということ。
先ほど書いた上水に向けて開発した地域をいうのでしょう。その土地の部分は幕府の
収入として課税できますが、人が住んでいないのでは農兵は取り立てられません。
こんな極端な例もあったのですね。
各村々の南側、現在でいえば新青梅街道から野火止用水までの間。ほとんど人は住
んでいなかったそうです。
多摩湖がある地域が、いかに東大和市域の住民にとって重要だったかということです。

すみません 多摩湖は東大和のものです。

観光5
日本で一番美しい形の取水塔。
この付近が、かつて清水村名主の住居があった場所です。


「なんだー。このボタンちょっと押してみるんだな。うーん、なんだー。」



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[ 2023/04/03 ] 我が東大和市 | TB(0) | CM(4)

こんにちは。

水利に絡む事案は生活や農業に直結するだけに、古くから水争いは何処でも深刻な問題でしたね。

それにしても分水界を越えて村が南へ伸びていくというのは珍しい例ですね。
[ 2023/04/04 18:11 ] [ 編集 ]

kanageohis1964さま

お返事が遅くなりすみませんでした。
狭山丘陵の南は河川の名将にしても空堀川とか残堀川とか砂川とか石川とか。
およそ水量が多いとは思えない小さな川ばかりですので、農民が生きていくには
厳しい環境だったと思います。
六ヶ村が一斉に南へ南へと開発していったのは、私も面白いと思いますが、それほど
水への期待が大きかったのでしょうね。
[ 2023/04/08 10:30 ] [ 編集 ]

清水村

日本一のコメディアンだった、
と言っていいと思うのですが、(少なくも私の生まれた時以来では)
場所がら、その方のお墓の前をよく通ります。
ひと頃に比べると、ファンの訪問が少なくなった感じですが、やはりお花やお供物が絶えず供わってるな、と感じます。
やはり、この方のおかげで多摩湖は有名なったと感じますが、
半面、ログを読んで、歴史歴にも東大和のものとの意見に納得しました。
何といっても水没した地域がモノを言う。
多摩湖は東村山のものです。

それはさておき、
清水村が本村地域以外人が住んでおらず、農兵にも加わらなかった、というのは全くしらず、極めて興味深いです。
実はここには「清水村安五郎」という岡っ引がいたらしく、
最近刊行された『新・府中市史(近世資料編 下)』でも422頁に名前が出てきます。(他に例の岡引頭・田中屋の墓石にも名前が出てきます。)
時々史料内に名前の出てくる人でありながら、詳細は不明。
ただ今回の記事を読んで、清水村がちょっと事情の複雑な場所だということを知り、今後、安五郎の詳細を知る上で大きなヒントになった気がします。
本当にありがたいです。
[ 2023/04/22 23:53 ] [ 編集 ]

甚左衛門さま

私も農兵を調べているときに、清水村の事情を知りました。
一つの村内で、支配が分かれている場合は地域よりも家々で分かれていることが多いのですが、清水村のように地域でハッキリと分かれているケースもあるんですね。
安五郎については、私も興味がありますので気に留めてみようと思います。
情報をありがとうございます。
[ 2023/04/27 10:26 ] [ 編集 ]

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