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「どうする家康」、世良田氏と家康

お久しぶりです。
前回の記事に書きました講座が終わりまして、ちょっと一息ついた所です。
このあと、5月からは中央区日本橋や文京学院大学生涯学習センター等で
やはり「松平家と徳川家康」関連の講座を予定。
その合間には神奈川県大和市で幕末・明治維新の講座も行っていきますので、
お近くの方はぜひともお寄りくださいませ。

というワケで「どうする家康」ですよ。
19日放送の冒頭で、ついに松平から徳川へ改姓していましたね。
なんとな~く、シレッと流してしまったようで、松平が源氏の末流であるという根拠
の「世良田」とか「得川」とか、よくわからないうちに里見浩太朗に言いくるめられ
てしまったぞ、という方も多いと思います。
その辺り、ちょうど先日の講座で話しましたので、ちょいと今回はそのお話をしたい
と思います。

三河の一向一揆を鎮圧して、ついに三河一国を平定した家康です。三河の頂点に
立ったよということを朝廷に認めてもらいたい、つまり叙任していただきたいのです
が、時の正親町天皇は首を縦にふりません。
「あかんわ、そんなん。松平なんて、そんな氏素性も知れん男に叙任なんかでき
まっかいな。先例があらしまへんわ。」とまぁ、こんな感じ。
先例・・・これが今も昔もこの国では大事なんですね。

そこで家康は、祖父の松平清康に注目します。
清康は一時三河を平定しかけながら、24歳で急死してしまったのですが、武勇や
知恵に優れ、情にも厚い人物だったと伝わります。
この清康が、松平家の菩提寺である大樹寺に多宝塔を建てているのですが、その
柱の銘文に自ら「世良田次郎三郎安城四代岡崎殿」と書いているのです。次郎三郎
とは清康のこと。当時の居城は安祥城でした。
さて、祖父が名乗った「世良田」とは、どんな一族なのでしょう?

新田源氏

上の図は清和天皇から始まる清和源氏の大まかな系図です。
源義家の嫡子・義親が源氏の宗家であり、頼朝に続いてゆきます。
義親の弟・義国の嫡流が新田氏になります。この新田氏の分家が得川氏であり、
さらに得川から分かれた分家が世良田氏になるわけです。
新田氏は建長4年(1254)に当主の政義が何らかの理由で鎌倉幕府の御家人を
失職してしまいます。すると、分家の世良田氏が新田一族を代表するということ
もあり、後に義貞が新田氏を代表すると世良田氏も義貞に協力しています。

家康が世良田に注目するのもわかります。世良田氏は確かに源氏の傍流です。
源氏であれば名族中の名族。先例もバッチリ。
では、松平氏は本当に世良田氏の末裔なのか、と言われれば・・・それはNOです。

清康は松平家初代親氏から数えて7代目当主ですが、清康以前に松平家で世良田
を名乗った人は一人もいません。
それどころか、3代目当主だった松平信光は「加茂朝臣信光」と自ら記しており、
賀茂氏の流れだと言っています。まぁ、これもあくまで自称なんですが・・・。
ではなぜ、清康は自ら世良田などと名乗ったのでしょうか?
それは上の系図にヒントがあります。

新田氏の始祖・義重の弟から分かれた一族が足利氏ですが、その足利氏からさらに
分家したのが今川氏なのです。
鎌倉幕府執権北条氏を滅ぼしたあと、源氏の内部で足利と新田の激しい争いがあり、
勝ったのは足利氏です。駿河・遠江の守護となった今川氏は足利系。さらに松平氏の
住む三河の守護・斯波氏も足利系です。
清康はこれら足利系の名族に対抗して、あえて新田系の世良田を名乗ったのでは
ないかと云われています。ハッタリをかましたワケですね。

そんな勝手に世良田を名乗って、本当の世良田が文句を言ってきたらどうするの
かって?それは大丈夫。
世良田氏は新田義貞に加勢するも、ことごとく戦場で足利軍に敗れ、所領地(群馬県
太田市世良田町)を離れざるを得なくなります。その後、室町時代になると関東地方は
関東公方足利氏と関東管領上杉氏の争いとなりますが、世良田一族もその戦いの中
に身を投じてゆきます。しかし、一族は多くの死傷者を出し、ついに史料上から世良田氏
は姿を消してしまうのです。
つまり、今更ながら世良田を勝手に名乗ったところで訴えられることはない。

家康は松平から(得を徳になおし)世良田の本筋である徳川へ復姓したと申請しました。
改姓ではなく、復姓・・・つまり本来の姓に戻したと訴えたわけですね。
巧妙に世良田の系図に自分の先祖をくっつけたんです。
これにより、家康は源氏の末裔となれたのでした。
系図上はね。

松平清康墓a
松平清康の墓(大林寺)


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[ 2023/03/21 ] 大河ドラマ | TB(0) | CM(0)

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