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文京学院大学生涯学習センター 「江戸の名勝地・王子」④

王子駅前はかつて一面の田畑で、その中に反別7畝28分の村有地があったと
「王子町史」にあります。俗に装束畑と称し、常に雑草の生い茂った寂しい場所
だったそうです。その中央に榎の古木がそびえており、この木を装束榎といいま
した。江戸時代までは2本あったと「新編武蔵風土記稿」にあります。明治中期に
榎の大木は枯れましたが、装束榎の記念碑が建てられました。戦前は榎町という
町名にもなっています。
新しい榎も植えられましたが、昭和4年(1929)、道路拡張のために榎は切り倒され
てしまいます。
それが、前回ご紹介した、王子の黄色いランドマーク「ほりぶん」前。

装束榎が切り倒されたあと、その東部に社が建てられ記念碑も移されました。昭和20
年(1945)の空襲で東南方面から延焼してきた火災がここで止まり、北西一帯の住民
が助かったことから社殿が建立されることになります。
それが装束稲荷神社です。

101 装束稲荷神社a

地元の方の話によると、王子稲荷神社、装束榎跡(ほりぶん前)、そしてこの装束稲荷
神社は一直線でつながるんだとか。地図で見ると、確かに!

装束榎碑

これが元々、榎のあった場所に建てられていた装束榎の記念碑
史跡の写真を撮るなら夏よりも秋冬がいいですね。夏はこうやって植物が生い茂って
見事に被写体のジャマをしてくれます。
冬になったら、もう1回写真撮り直しに行こう、だわ・・・。

駅前に戻りまして、ぜひとも寄りたいのがコチラのお店。

70 扇谷a

卵焼きの扇屋さんです。
音無親水公園から王子駅へ向かう間にあります。
扇屋は、慶安元年(1648)に初代弥左衛門が農業のかたわら「農間煮売商人」の
看板をかけ掛茶屋をしたのが始まりで、現在15代目。寛政11年(1799)に料理屋と
なり、八尾善、平清、酔月楼と並び一流と評され、主に武家を客としました。
落語「王子の狐」にも出てきますので、思い出す方も多いのでは。

扇屋a

コチラがかつて、料理屋を営んでいた頃の扇屋さん。
明治期に3階部分を建て増した頃の写真だそうです。

現在、諸々の御事情により料理屋は閉店されていますが、名物の卵焼きをスタンドで
販売されています。
これが、ヒジョーに美味し!
江戸風の甘い味付けであります。王子のお土産といったら、コレです。

もし、お店に15代目のご主人が出ていらっしゃったら、ラッキー!
ご主人は王子の観光ガイドもされていらっしゃるので、王子の歴史について
聞けばいろいろと教えていただけます。

以上をもちまして、文京学院大学生涯学習学習センター講座 「江戸の名勝地・王子」
のまち歩き、終了です。
実際にはブログでご紹介した史跡の他にも、立ち寄った所はありましたが、中心の
ポイントだけを書き出しておきました。

最後に、講座らしく王子に関係する2人の著名人をご紹介しておきましょう。

先ず1人目は、二代目瀬川菊之丞

二代目瀬川菊之丞a
「執着獅子」 三代目歌川豊国

江戸中期の歌舞伎役者。屋号は「濱村屋」。俳名「路考」。
王子の農家・清水半六の子として生まれますが、初代・菊之丞が王子の農家の
娘に産ませた子という説が有力で、寛延3年(1750)5歳のときに初代の養子と
なります。宝暦6年(1756)初代が演じた「百千鳥娘道成寺」を披露して、二代目
を襲名しました。
容姿にすぐれ、地芸・所作、時代・世話を兼ね、本格的な女形としては初の江戸
出身だったため「王子路考」と呼ばれて、大人気をとりました。「路考髷」「路考茶」「路
考櫛」など路考にちなむファッションが、女性の間で大ブームを呼びました。現在の
歌舞伎・日本舞踊でも人気演目である「鷺娘」は、二代目菊之丞が初演したものです。

2人目は万延元年(1860)10月、開港直後の日本にやってきたイギリス人のロバート・
フォーチュン Robert Fortune


ロバートフォーチュンa

スコットランド生まれ。エジンバラ王立園芸協会所属の著名な園芸学者で、東洋植物の
ヨーロッパ移植を成功させた先駆者として知られます。
日本に滞在していた約1年余りの間に、長崎、神奈川、江戸、兵庫などを訪れました。その
旅行中の見聞記「江戸と北京」(Yedo and Peking, 1863)には、王子を歩いたときのことが
印象的に記されています。

王子は、言わば、日本のリッチモンド(ロンドン西郊の住宅地)で、そこにはイギリスの「スター
・アンド・ガーター・ホテル」に匹敵する有名な茶屋がある。ここは江戸の善良な市民達が一日
の遊楽や気晴らしに来る所で、たしかこれ以上の娯楽場を探すのはむずかしいだろう。
やがて道は小丘の下へ出た。道の両側には、郊外の平凡な住宅や庭の生垣がつづいていた。
村に近づくと多勢の人々が外国人を見に出て来た。近頃では外人もとくに珍しいことではない
のに・・・・・・。幾人かの子供に馬をあずけて、われわれは茶屋の中へ案内され、愛想のよい
娘に迎えられた。
茶屋のささやかな庭には、木々の枝や緑の岸や美しい花々でおおわれた小川が流れていた。
近辺一帯がすこぶる愉快で、娯楽を求める江戸の人びとが愛好するに足る場所だと思った。
われわれの前に運ばれた茶や菓子、ゆで卵その他珍味のお相伴をしてから、その辺の田舎
へ散歩に行こうとした。 「三宅馨・訳」


幕末当時の日本の庶民の様子が、外国人の視点からよく描写されています。
リッチモンドとか、スター&ガーターホテルって、そんなに王子やそこにあった茶屋に似てるのだ
ろうかと、いろいろ検索してみましたら、出てきました。

スター&ガーターホテルa
Star and Garter Hotel

こ、これ・・・王子に似てます・・・?

ちなみに下の絵が「江戸名所図会」に出てくる、音無川と周辺の茶屋の絵。

江戸名所図会・音無川a

・・・・・・・・・・・・・・。
まぁ、その・・・。
フォーチュン兄さん、褒めていただき、あざーす!!

「江戸の名勝地・王子」編 完。


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[ 2019/08/08 ] 番外編 | TB(0) | CM(2)

王子

王子とか赤羽っていう所は「遠い」イメージがあったのですが、鉄道沿線の発達のおかげで随分短時間で行ける場所になったように思います。
で、この記事をみて絶対行きたいなーと思うに至りましたよ。
扇屋の卵焼き食べてみたい。

それから、今回はstar and garter ホテルと「江戸名所図会」の下りに
笑わせてもらいました。
本当、「フォーチューン兄さん、あざーす!!」ですね。

別に縁もゆかりもないけれど、外国の人、それも昔の人に自国を褒めてもらえるとなんだか、妙にうれしいもんですね。
[ 2019/08/20 23:27 ] [ 編集 ]

甚左衛門さま

返信が遅れて、大変すみませんでした。

王子はご紹介した他にも、まだ多くの寺社がありますし、飛鳥山には資料館もありますので、ゆっくりと散策されるのもよろしいかと思います。

ロバート・フォーチュンの「江戸と北京」は、同じ東アジアの国である日本と清国の文化比較論なんですけど、その多くを日本の描写に当てています。いい意味で、日本の文化・生活習慣に大きな衝撃を受けたのでしょうね。
当時の外国人は、日本を褒める人ばかりではなかったでしょうが、こういう人がいると嬉しいですよね。
[ 2019/08/27 12:05 ] [ 編集 ]

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