名所江戸百景「王子不動之滝」 歌川広重飛鳥山を降りると目の前に石神井川が流れています。王子の辺りでは音無川とも
呼ばれています。豊島氏が紀州にちなんで名付けたのは、前回に書いた通り。
武蔵野台地と川との落差により王子周辺にはかつて多くの滝があり、「王子七滝」
と呼ばれていました。
王子が江戸の名勝地と呼ばれる由縁の一つですね。
上の絵は、王子七滝の中でも最も有名だったと云われる
不動の滝です。
「新編武蔵風土記稿」は「病者ツトイ来テ浴セリ」と書いています。
しかし、川がたびたび氾濫したので、近代以降は護岸工事が行われ景観はすっかり
変わり、ほぼ全ての滝が姿を消してしまいました。
不動の滝があった場所は正受院というお寺の裏。正受院は現在も残っていますが、
滝が流れていた所は、今はこんな感じ。

矢印の辺りが滝の流れていた場所と思われます。
石神井川の流れも江戸時代とはだいぶ変わってしまっています。
かつては飛鳥山の麓を沿うように流れていましたが、現在は飛鳥山の下を暗渠として
通しています。

この橋は音無橋。江戸時代にはこの場所に橋はありませんでした。
石神井川(音無川)の王子神社傍らに渡したアーチ型鉄筋コンクリート橋で、昭和4年
(1929)12月に起工し、同6年1月に竣工しました。王子町と滝野川町を繋ぎ、交通の
便が図られました。渋沢栄一が建築や音無橋開通式協賛会へ支援したといいます。
川はこの橋の手前から暗渠になっています。
渋沢栄一といえば、飛鳥山に邸宅を構えていたことで知られていますね。
庭園が公開されていますし、史料館もあります。
今回のまち歩きでは時間の関係で寄りませんでしたけど、新紙幣の肖像画に渋沢栄一
が採用されたとあって、王子では今、ちょっとした渋沢ブームが起きています。

渋沢が紙幣の顔に選ばれたのは、彼が日本経済の父というところからなのでしょうけど、
元はといえば幕臣で、陸軍奉行支配調役として京都に赴任。新選組の土方歳三と捕物
に出動したこともある人物です。
明治以降、紙幣の肖像に選ばれた人物は、文化人や学者を除けば明治新政府側の
人物ばかりだっただけに、江戸幕府の中枢にいた人が初めて選ばれたということに、佐幕
派のワタクシとしては感慨深いモノを感じます。
さて、暗渠になってしまった音無川の替わりに、その流れを再現した公園が音無橋の下に
作られています。
音無親水公園です。

この写真を撮った日は平日でしたし、まち歩き当日は小雨模様だったので人影はまばら
ですが、休日ともなれば子連れファミリーが大勢やってくるようです。今頃は水遊びで
盛況でしょうね。
ちなみに、この水路の水はろ過装置による循環水だそうです。
写真に橋が写ってますが、もちろんコレは公園を整備するときに作った橋。
今はもうありませんが、現在の王子駅のやや西側、ガード下のあたりに、あすか橋という
橋があったことが古地図を見るとわかります。
この橋は、あすか橋を再現しているのかも、と思いました。
順序が逆になってしまいましたが、先ほどの音無橋を渡るとすぐ右側にあるのが
王子神社です。

それ創建年代は不明ですが、平安時代の康平年間(1058~1064)に源義家が
前九年の役で立ち寄り、戦死した兵を弔うために金輪寺を建立し、この神社には甲冑
を納めたといいますから、それ以前の建立ということになりますね。
ただし、この頃はまだ王子神社という名称ではなく、祭神もわかりません。
豊島氏代々が崇敬していましたが、元亨2年(1322)に豊島氏が紀州熊野三社より王子
大神を勧請して、「若一(にゃくいち)王子宮」又は「王子権現」として再興しました。
祭神は、伊邪那岐命、伊邪那美命、天照大神、速玉之男命、事解之男命の五柱の神様。
これらの神様を総称して「王子大神」といいます。若一王子は天照大神のことです。
王子は熊野三社権現(本宮、那智、新宮)の御子神の呼称です。
ざっくり言えば、熊野権現=王子権現ということになります。
明治以降、王子神社と改めました。
元々、この辺りは岸村と言っていたのですが、これより王子村と村の名前も変わります。
さて、義家が建立した
金輪寺は、王子権現の別当寺(神社を管理するお寺)として江戸
時代まで広大な寺域をもっていました。歴代将軍が鷹狩りや日光参詣の際に立ち寄り、
御膳所や休息所としても使われました。
ところが、幕末に火災にあい、その後の廃仏毀釈の影響でそのまま廃寺となってしまい
ます。現在の北区区役所のある辺りが金輪寺のあった場所です。

明治36年(1903)に、湯島の霊雲寺と地元の檀家がはかり、残っていた支院(塔頭)の
藤本坊に金輪寺の名跡を継がせます。
これが、王子駅の西方にある、現在の王子山金輪寺です。

写真ではわかりませんが、本堂の屋根に葵紋が燦然と輝いております。
将軍家との繋がりを感じさせますね。
以下、つづく。
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