またまた1ヶ月近くが経ってしまいました。
今年の二月から講座やらまち歩きガイドやらを、コンスタントにやらせていただき
まして忙しかったのですが、今月の22日で一区切り。秋までは講座もガイドも
入りませんので(夏に東京でまち歩きなんぞやったら死人が出ますでな)、ブログを
書く時間もできると思います。
さて、そんな中なのですが、待望のお芝居を観てまいりました。
歌舞伎座六月公演
「月光露針路日本」であります!
え?読み方がわからない?そうですね、歌舞伎ってのは、ワザとみたいに難しい読み方
をつけますからな。コレで
「つきあかり めざす ふるさと」と読ませるそうでございます。
こちら、三谷幸喜が脚本を書いた新作歌舞伎。原作はみなもと太郎の歴史漫画「風雲児
たち」。
この原作・脚本のペアでは、去年ですか、NHKのドラマスペシャルで杉田玄白や前野良沢
の解体新書のエピソードを取り上げていましたね。
今回は別ストーリーを歌舞伎で、ということになったようであります。
今回のお芝居は1700年代末に、漂流の末にロシアへたどり着き、女帝エカテリーナ二世
に謁見した
大黒屋光太夫のお話です。
主なキャスティングは
大黒屋光太夫・・・松本幸四郎
庄藏・エカテリーナ二世・・・市川猿之助
新蔵・・・片岡愛之助
小市・・・市川男女蔵
九右衛門・・・坂東彌十郎
磯吉・・・市川染五郎
口上・・・尾上松也
ラックスマン(父・子)・・・八嶋智人
三五郎・ポチョムキン・・・松本白鸚 などなど。
ここからは、ネタバレ注意です。まぁ、ほぼほぼ史実の通りなので、隠す必要もないの
ですが。
光太夫は江戸時代の外交史でもよく語られる人物ですが、彼は能動的に何かを成し
遂げようとしたワケではなく、たまたま漂流してしまった結果、数奇な運命を辿ってし
まった人物です。
舞台の幸四郎光太夫も船の上では経験の浅い、どこか頼りない男。
しかし、だからこそ彼はなんとか仲間全員で日本へ帰るという意思を、ハッキリと皆に
宣言し、実行します。ロシア語を覚え、現地に溶け込み、少しでも可能性があれば
遠くの町にまで責任者に会いにいく。
その真っ直ぐな思いと実行力が、彼を風雲児に押し上げたのでしょう。
さすが、三谷幸喜の脚本だけあって、全編の85%は爆笑の連続。
しかし、光太夫以外の登場人物も、歴史ファンの三谷さんだけあって、とても魅力的
に描かれています。
少しやさぐれた庄藏を全編で演じながら、クライマックスでエカテリーナを演じた演之助。
久しぶりに女形を見させてもらいました。それが、まさかドレス姿とはww
わざと冷めた所を見せる新蔵の愛之助、頑なにロシア語を覚えようとしない九右衛門、
反対に完璧にロシア語を覚える磯吉。
唯一、歌舞伎役者ではない出演者の八嶋智人はラックスマン父子。登場の一瞬でその
場の空気を変えるところはサスガです。
ロシア側の代弁者として出てくるポチョムキンに白鸚。さすが、ヨーロッパ貴族スタイルは
似合います。ところでワタクシ、世界史はあまり知らないのですが、ポチョムキンって
この時代の人だったんですね。もうちょっと後の頃だと思ってました。
ていうか、サイレント映画の「戦艦ポチョムキン」しか知らないス。しかもタイトルだけww
クライマックスからは涙なしには見られない別離のシーン。
一緒に帰るハズだったのに、新蔵と庄藏はキリスト教に改宗してしまい、残留を希望。
二人はすがるものが欲しかったからだと言いますが、真実は凍傷から片足を切断しな
ければならなくなった庄藏が、日本語教師になることを条件に手術をさせてもらったこと
がわかります。
この辺りのエピソード、史実なのかどうかワタクシは知らないのですが、光太夫を安心
させて送り出したあと、望郷の思いから号泣する新蔵と庄藏に、胸が熱くなりました。
結局、遭難した17人のうち帰国できたのは光太夫のほか二人だけ。
しかし、そのうちの一人小市は船の上で亡くなってしまいます(史実では根室に着いて
かららしい)。
昔観た「天平の甍」という映画を思い出しました。奈良時代に鑑真和尚を日本に連れて
こようとした遣唐使の話です。この話でも、帰国を前に無念にも亡くなる遣唐使が描かれ
ていましたが、その姿が重なりました。
現代では簡単に外国へ行けるし、帰ってもこれるから、当時の遣唐使や漂流者の望郷
の思いは想像もできません。
というわけで、大満足の観劇でした。
歌舞伎ファンの中には「こんなのは歌舞伎ではない」と仰る方もいるかもしれません。
たしかに「伝統的演目」ではありませんが、私はこのような新作歌舞伎、特にエンター
テイメントに徹した演目は大歓迎で、どんどんやってもらいたいと思っています。
所作(踊り)はともかくとして、元々江戸時代の歌舞伎狂言はワイドショー的な人気を
狙った演目が多く、そのために大衆の人気を呼び、現在まで続く芸能となったわけです。
現代に多くのファンをもつ演出家や脚本家を招いて、どんどん新作を作っていくことは
歌舞伎の将来に繋がります。その上で伝統芸である所作や時代ものを見たいと思う
ファンが増えてくれれば、それが一番いい。
なんてコトを書いていましたら・・・8月の歌舞伎座も(例年8月だけは3部構成です)
2部で、これまた幸四郎と猿之助が恒例の新作ギャグ歌舞伎「東海道中膝栗毛」を
上演するとのこと。
この2人、仲いいなぁー。この弥次喜多シリーズも何作目だろう?
コレも観にいかなくちゃだわ。

注・サタデー・ナイト・フィーバーに非ず!
「なんだー。このボタンちょっと押してみるんだな。うーん、なんだー。」


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