番外編です。
前にやった「新歌舞伎座ご案内」が一部でヒジョーに評判が良くってですね。
時々は歌舞伎ネタでブログを書いてみようかな、と思ってる今日この頃でござい
ます。
で、今回は先日見てきたばかりの歌舞伎座五月公演の中から
「京鹿子娘二人道成寺」観劇記をお送りいたしませう。
(きょうかのこむすめににんどうじょうじ、と読みますよ、ご主人。)
四月からの歌舞伎座杮葺落し公演は、演じる役者さんも豪華ですが、演目も
みんなが知ってるメジャーなお芝居ばっかりで、どの月のどの部を観ても楽しめる
金太郎飴状態なんですけど、ワタクシが密かに狙ってたのがこの道成寺。
その理由は後ほど語り尽すとして、まず「歌舞伎の道成寺」って何ぞや?ってのを
ザックリと、黒猫ポンちゃんにもわかるようにご説明しますね。
ホントだろうな、ブーーー。紀州道成寺には
、安珍・清姫伝説ってのがあります。
昔、奥州の白河から熊野に参詣に来た安珍というイケメンの僧侶がいたんですな。
これを地元のギャル清姫ってのが一目惚れ。逆ナンを仕掛けるんですが、安珍は
修行の身。テキトーにごまかしてさっさと行っちゃった。清姫は「マジ許せねーッ、
すっげームカつくんですけど!」とのたまいながら追っかけてくる。アセった安珍は
道成寺の鐘の中に隠れてしまいます。
「ハァ?意味わかんねーッ!」と怒りが頂点に達した清姫は、灼熱の炎を吐く大蛇に
大変身!鐘に巻き付いて安珍を焼き殺し、自らも入水してしまうのでした。
この話の後日譚を扱ったのが
能の「道成寺」。道成寺の鐘を供養する日に美しい白拍子がやって来る。女人禁制の寺なれど、舞を
奉納するので鐘の供養を見せてほしいと言います。ところが舞ううちに白拍子の様子
がおかしくなってきます。彼女は清姫大蛇の化身だったのです・・・。
この能のストーリーを舞踊劇にしたのが、歌舞伎の「道成寺」なんですね。
道成寺を題材にした踊りは、江戸時代にいくつか登場していて、最初は元禄年間
(1688~1703)の「三世道成寺」とされています。
それから「傾城道成寺」とか「百千鳥娘道成寺」とかいくつもの道成寺モノが作られるん
ですが、宝暦3年(1753)に
初代中村富十郎が踊った
「京鹿子娘道成寺」がミラクル大ヒット!以降、道成寺といえばコレ、になってしまいました。
とまぁ、難しい話はこれくらいでいいでしょう。ポンちゃん寝ちゃったし。
ワタクシ、歌舞伎は大好きなんですが、基本ミーハーなんで。そーゆーアプローチで
ブログも進行していきます。
今回の演目の「京鹿子娘二人道成寺」ってのは「京鹿子娘道成寺」のアレンジ版で、
白拍子(清姫大蛇の化身)が二人出てくるという趣向です。
この二人を
坂東玉三郎さんと
尾上菊之助さんが演じます。
実はこの「道成寺」、観客に思わぬ
「おみやげがもらえちゃうかも!」っていう
趣向が用意された舞台なんです。
このお芝居には白拍子の他、所化っていう坊さん役の役者が15~20人くらい出てくる
んですが、それら出演者が踊りの途中で、
客席に手ぬぐいを投げるんです。
ただの手ぬぐいじゃありませんよ、公演に合わせて作られたオリジナル・非売品のスペ
シャル・グッズです。
コイツをいただこうというワケなのさぁ、フ~ジコちゃ~ん!
モチロン、観客の全員がもらえるってモンじゃありま温泉、ありません。
1人の役者が持ってる手ぬぐいは3本ほど。合計約50本。
客席数約2000席の中、これをいただこうってんですから、やはり戦略が必要です。
座席は1階席をキープするのが大きな条件ですが、今回はラッキーでした。
6月まで歌舞伎座公演は三部制ですが、道成寺はその三部めに組み込まれています。
三部は終わるのが夜9時を過ぎるので、若干チケットの売れ行きが鈍いんですね。
比較的希望する座席が押さえやすくなります。
4月始めにチケット予約しましたが、やりましたヨ、1階13列5番の座席キープです。
「もっと前の方がいいんじゃね?」とポンちゃんは言いますが、ここで十分。それよりも
花道の近くを取れたってことが重要なんです。
さぁ、いざ歌舞伎座へ、レッツらゴー!
5月公演三部は他に「梶原平三誉石切」(かじわらへいぞうほまれのいしきり)っていう
お芝居もありましたが、こちらのインプレッションはまたいずれ。
「京鹿子娘二人道成寺」の幕が開きます。
揚幕から所化が花道を歩いてきます。通常は15人ほどの所化が登場するのですが、
今回は開場記念ということもあって、総勢20人以上が登場。
坊主ばかりが20人!壮観です。
たいてい、この所化という役は若手の役者さんが演じます。でも、リーダー役の所化は
ベテランが演じることが多くて、今回も大ベテランの
市川團蔵さんが勤めてます。
ちなみにワタクシ、この團蔵さん大スキ。悪役が多いんですけどね。悪役ファンですから。
でまァ、所化がガヤガヤやってる所に白拍子の花子が登場。一人が花道を揚幕から
やってきますが、
もう一人は「すっぽん」から登場します。すっぽんてのは、花道の途中にある穴のこと。舞台の下からせり上がってくるわけです。
歌舞伎ではすっぽんから登場するキャラは「人間ではない者」というコトになっています。
たいていの場合が妖怪変化とか妖術使い。
二人道成寺は通常、舞台の上手にも花道を作って両花道から花子を登場させるんですけど、
今回はすっぽんを使って一人を登場させるという演出でした。
「すでにこの女は
清姫の亡霊なんだゼ」ってのを、観客にわかりやすくしてるんですな。
コレ、玉三郎さんのアイデアらしいんですが、さすが名プロデューサーでもある方ですね。
舞台の中盤はツイン花子の舞の競演。
この踊りはシロートのワタクシから見ても相当にハードな内容で、上体を海老反りにしたり、
しゃがんだまま鞠をつく真似で舞台を一周したり・・・。で、それを女性らしく、それ以上に
女性らしく踊らなければいけないんだそうで、その辺りが女形の踊りとしての最高峰と
云われる由縁なんでしょうなぁ。
さぁ、いよいよ肝心の(ミーハー的に)時が近づいてまいりました。
花子が小道具を持って踊るようになります。鞨鼓(かっこ)という小さな鼓や鈴太鼓という
和式タンバリンを持って、踊りもリズミカルに変化します。
「おぉ、GS時代の岸部シローにさも似たり!」と思った人に+10点。
そしてW花子が手ぬぐいを手に踊りはじめました・・・!
「オレは今、東京ドームのライトを守っている・・・!」頭の中をギヤチェンジ。左手に意識を集中させましょう!
踊り終えた花子たち、後見から受け取った手ぬぐいを中央前列の観客席にパラパラと
投げ入れます。「わぁッ」と沸く観客席。さぁ、ココからです!
舞台の上手と下手に控えていた所化たちが、花子と入れ替わるように舞台の前方に
出てきたら、
プレイボール!懐から固く折畳んだ手ぬぐいを取り出し、観客席に投げ入れます。
下手にいた所化は
花道を歩んで、そこから投げます。ここが作戦の狙い目、
花道近くをキープしたことの意味はここにありました。花道付近は一番多くの手ぬぐいが
降って来るチャンスポイントだったんですね。
と、自分の左上方に打球・・・ならぬ手ぬぐいが飛来ッ。チャンスは一度!
「オレは長野か松本か!?」グローブをはめた(イメージ)左手を伸ばします・・・。
Getぉぉーーーーーーッ!!やりました、見事手ぬぐいキャッチです。
野球やっててよかったーッ!長嶋さん、松井さん、国民栄誉賞おめでとぉー!
でも露骨に喜ぶのはバットもない・・・もとい、ミットもないので努めて冷静さを装います。
本日の任務完了!(キリッ)悲喜こもごものどよめきの中、
再び舞台に集中。切り替えが大事。花子がついに本性を現し、鐘の上に上ってフィナーレ。
パチパチパチ・・・あぁー、いい舞台だったッ!いろんな意味でー。
手ぬぐいはその場では広げません。ブラック団に強奪される恐れがあるので、帰宅して
からゆっくり鑑賞タイムです。

こちらが本日の戦利品。演目のタイトルと、白拍子花子を演じた玉三郎・菊之助
両名の名前がありますね。

真ん中の絵はお二人の紋。右上の濃いブルーが玉三郎さんの「花かつみ」。
左下水色が菊之助さんの「重ね扇に抱き柏」です。
ワタクシも歌舞伎ミーハーファンとして、なんとか今回の杮葺落とし公演ならではの
記念グッズ、小泉純ちゃん元首相(歌舞伎ファン)にも自慢できるレベルのグッズを
欲していたワケですが、その野望も達成できました。
森羅万象に感謝。ありがとうございます。
で・も・ね・・・実はワタクシ、以前にも「道成寺」で手ぬぐいをゲットしているのでございます。
フライング・ゲット。

それがコチラ。
もうかれこれ10年ほど前になりますが、新橋演舞場で手に入れました。
このときは「京鹿子娘道成寺」で、白拍子花子を中村福助さんが演じました。
中央に福助さんの紋「祇園守」と「裏梅」、そしてサインが染めてあります。
気になるのが左に書いてある7人の名前。
なんか稚拙な字だなぁ・・・。そう思った人?

これらは所化を演じた、当時まだ子役だった役者さんたちのサインなんですよ。
野球カードならルーキーカードみたいなモンですね。
中村隼人クンは、今ギャルに一番人気の歌舞伎俳優って言われてますね。
「八重の桜」でも松平定敬役で絶賛活躍中です。
それから中村種太郎は、現在の四代目中村歌昇クン。
他には福助さんの子供の中村児太郎クン。
中村歌六さんの子供の米吉クンと龍之助クン兄弟。
大谷友右衛門さんの子供の廣太郎クンと廣松クン兄弟。
もちろん福助さんのサインと同じく染めてあるものですけど、なかなかの記念
グッズでしョ。
彼らが名優と呼ばれるようになれば、この手ぬぐいの価値も上がるワケで・・・
ガンバレーー!!若手役者たち!!
つーワケで、真っ当な歌舞伎観劇記とは言えませんが、「オレ的歌舞伎インプ
レッション」はこんなカンジ。
ちゃんちゃん。
あ、でもね、「道成寺」はホント素晴らしい舞台だから、機会があったら一度ぜひ
見てくださいね。
それと、手ぬぐいは1階席じゃなきゃチャンスないンでしょ・・・なんて思わないでね。
さっきも言ったように所化は若手が演じてるんで、肩に自信のある役者さんは2階席
まで放り込んでくれます。これも花道の近くがチャンス多いかな。
それでは、また。
歌舞伎座でお会いしましょう!

「壬生義士伝」かなんかの小説で、真っ黒になった手ぬぐいの話が出てきた
ような気がしたんですが・・・。
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