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総司の気遣い と 梅吉最終回

20150206.jpg


前回で「梅吉(梅次郎)一件」について、慶応元年(1865)7月に梅吉が逐電した
所で一区切りをつけました。
「里正日誌」からも「指田日記」からも、その後の梅吉の行動を追えなかったから
です。
ところが先日、ブロ友の野火止用水さんから一つの史料をご提供いただきました。
そこには梅吉の逐電に関する重大なことが書かれていましたので、ここにご紹介
したいと思います。

先ずはその前に、「指田日記」から梅吉の逐電と、周りの対応についての箇所を
書き出してみましょう。

「7月24日 梅次郎、逐電。

25日 梅次郎の一件について、内々に話し合う。

9月15日 梅次郎の一件について、戸羽(戸端)名主と茂左衛門に差紙が来る。

16日 戸羽名主並びに茂左衛門、組合代の孫左衛門、差紙が来たので、布田宿
(調布市。甲州道中の宿場)に出る。」


梅吉の逐電の理由はわかりませんが、村に江戸から召喚状が届き、村の代表らが
呼び出されています。タダ事ではないな・・・という雰囲気だけは伝わります。
そこで、今回の史料です。

「恐れながら書付けをもって申し上げ奉ります。

武州多摩郡中藤村の百姓康左衛門が病気のため、代理で親の丑右衛門が申し上げ
奉ります。梅次郎と申す者より生糸を買い取ったかの旨を、お尋ねにございます。

この前書にある梅次郎は兼てよりの知人であり、当7月22日私方に罷り越し、他から
頼まれた売り物があると申しました。左の通りです。
一、生糸 421目
この代金9両と137文

右の品を持参し、買い取ってくれるよう申したのに任せ、間違いもないだろうと思い、
よく出所も聞かないで、証人もなく判もなく右の値段で買い取りました。
翌23日に同郡八王子宿の市場で、名前住所の知らないものに売値3分2朱で売り
払ったと申しました。
然るところ梅次郎は、このほど御役所様がお召し捕りになり、お調べの上、右の品が
不正に〇〇したと仰せ聞かされ、恐れ入り奉りました。
右のお尋ねにつき、申し上げました通り、間違いございません。以上。
  慶応元丑年12月13日 
                 武州多摩郡中藤村 百姓 康左衛門煩いにため代理
                    親 丑右衛門
                    名主 
                     差添え人 市郎右衛門
 火付盗賊改 御役所様   」


これは武蔵村山市の乙幡氏の文書で、「村山町史」に出ているものだそうです。
火盗改からの質問に答える形で書かれた書状であることがわかります。文中〇〇と
判読できない箇所がありますが、どうやら梅吉は不正(詐欺)を働いて生糸を売り
つけていたようですね。
7月24日の逐電は、23日の八王子市場でその詐欺が発覚したためでしょう。

梅吉は「綿屋」の屋号で呼ばれていたようですが、生糸を扱う渡世をしていたことも
わかりました。
商売のノウハウや家を建てられるだけの経済力があった理由もわかりましたが、
やはりまっとうな仕事のしかたではなかったようですね。
火盗改に召し捕られていたとは・・・。


「なんだー。このボタンちょっと押してみるんだな。うーん、なんだー。」



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[ 2015/02/06 ] 新選組漫画 | TB(0) | CM(11)

こんにちは。

1両にも満たない額で仕入れたものを9両でって…。また買う側も見知った人間だからとは言え良くそんな高額を出したものですねぇ。幕末の押し迫った時期で市場も大分混乱はしていたでしょうが、この人があまり宜しからぬ商売をしていたのはこれで確定ですね。
[ 2015/02/06 21:35 ] [ 編集 ]

こんばんは。

ご訪問ありがとうございます。

新撰組の4コマ、楽しくてわかりやすいですね。

また、僕は学生のときに所沢に住んでいたことがるので、狭山丘陵は何度も歩いたことがあります。愛着をもっていますよ。

これからも応援いたします。

[ 2015/02/06 22:11 ] [ 編集 ]

綿屋と指田日記

みなさんおっしゃるように「綿屋」という屋号は気になりますね。講談では小金井小次郎の子分の中にも「綿屋の文五郎」というのがいますし、日野の綿十さんも武装過多で上州だか下野だかで捕まってましたよね。
ところで「指田日記」ですが、これは出版こそ武蔵村山教育委員会となっておりますが、
その実は「内野さん」とおっしゃる老碩学がほとんど独力で解析したものなんですよ。
日記中の主だった人の名字が追跡されているのも、この人の尽力によります。
一度だけ会う事が出来て、ご教示湯いただいたことがあるのですが、とりわけ観音寺の墓碑を完全に網羅しておられて、私はただただ圧っされるばかりでした。先述の桃太郎や博徒定右衛門の墓には関係者の名前が多く刻まれていたことを覚えています。(桃太郎はサンドブチ、つまり香具師だったようです。)
あるいは彼なら、梅次郎に関しても多くのことを御存じかもしれません。
いずれにせよ、地元の郷土研究をしている方の中には人知れずとびぬけた方がいるものだと思います。足を使って実際に尋ねてみると、やはり得るものは多いです。
[ 2015/02/06 23:51 ] [ 編集 ]

細かい話ですみません

前回コメントで逐電後の差紙に触れておいでだったので、気になっていました。
おかげさまで、梅吉の人柄がなんとなくわかってきました。
貴重な史料をご紹介くださって、どうもありがとうございます。
野火止用水さまにも御礼申し上げます。

前コメントの「ドントル筒」、「雷管外火式銃」を意味する言葉のようです。
アメリカで1816年に開発、日本でも天保10年頃から研究されて安政期より普及。
小銃・短銃が各地の銃工によって生産され、火縄銃からの改造も行われました。
当時「最新式の連発銃」と言われたのは、火縄銃や燧石銃に比べて
発射操作にかかる時間が短縮されたためと思われます。
江川文庫には雷管式ゲベール銃が所蔵されており、
これを「ドントル筒」と称していた様子です。

日野宿綿屋重蔵が慶応2年3月、榛名山から成田へ行く途中に捕まった件ですが、
問い合わせを受けた佐藤彦五郎の始末書によってすぐに釈放されています。
彼は良家の出(他村から養子入りした)で、こういう問題を起こしたことは
他になく、梅吉のような人物とは違うと思われます(笑)
[ 2015/02/07 01:46 ] [ 編集 ]

kanageohis1964さま

以前の記事で、梅吉が脇差を盗まれた一件をご紹介しましたが、このとき彼は
新宿まで呼び出されているんです。他の記事など読んでいると、火盗改が狭山
丘陵地域に用事があるときは新宿まで呼び出しをかけていることがわかりました。
おそらく、脇差盗難のときも火盗改からの呼び出しだったのではないでしょうか。
この時もただ「盗られた」だけではなく、何か他の事件に関係したモノだったか
もしれません。

いずれにしても、仰るように「宜しからぬ」人物だったのですね。
[ 2015/02/07 13:32 ] [ 編集 ]

大川原英智さま

ありがとうございます。
こちらこそ、大川原さんのブログを読ませていただき、東西や時代を問わず
色々な人物についての博学さに、感心しております。

所沢にいらしたのですね!あの辺りは埼玉といっても、東大和や東村山、武蔵
村山といった所と同じ歴史的な基盤がありますね。
西武球場や山口湖、多摩湖といった辺りにもいらっしゃったのでしょうか。

マニアックな記事とスカポンな漫画の拙いブログですが、これからもよろしく
お願いします!
[ 2015/02/07 13:45 ] [ 編集 ]

甚左衛門さま

失礼ながら、ワタクシの中で甚左衛門さんがどのような方なのか興味シン
シン丸なんです!
いろいろな郷土史についてよくご存知で、いつも感心させられてしまいます。

桃太郎は香具師でしたか。梅吉にしても桃太郎にしても、彼らの子供に関する
記述も「指田日記」にはあり、「親父がこんなで、村ではどう暮らしていた
んだろう?」と想像をめぐらせてしまいました。

仰るように、郷土史は表にはなかなか出ないけど、素晴らしい研究や調査を
されている方が多いですね。そういう成果を一同に持ちよせる機会などが
あったらいいのに、と思います。
[ 2015/02/07 13:59 ] [ 編集 ]

東屋梢風さま

ドントル銃について、いろいろとありがとうございました。

梅吉の脇差盗難については、kanageohis1964さんへの返答コメでも書きました
が、やはりなにか裏事情がありそうですね。
となると、ますます梅吉がなぜ買い付けの仕事を頼まれたのか、とても不思議
なのですが・・・。
[ 2015/02/07 14:12 ] [ 編集 ]

直接聞きに行きましょう

 イッセイさんの熱心さで、だいぶ梅次郎の姿が浮かんできました。でも、まだ実像がはっきりしません。生活基盤の背景がもやもやしているからだと思います。
 原山の見世での出入りなどから、アウトローと相当のつきあいがあるようです。
 どのくらい知ることができるか予測がつきませんが、地元の知り合いに連絡を取っています。具体化したら連絡します。
[ 2015/02/07 19:26 ] [ 編集 ]

野火止用水さま

梅吉がアウトローと繋がりがあることは、ほぼ間違いがなさそうですね。
そのような男が古鉄買いの仕事を請け負い、さらにその仕事が代官所の
絡む可能性があるというのが最大の謎ですね。
この辺りがハッキリわかると面白いのですが・・・。
ご連絡、お待ちしております。
[ 2015/02/08 19:23 ] [ 編集 ]

紹介

日本語の起源

言霊百神

kototama 100 deities
[ 2015/02/10 21:13 ] [ 編集 ]

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